第2章 運送業許可の基礎 10 運送業許可取得までの流れ
結論
運送業(一般貨物自動車運送事業)を始めるためには、営業所を管轄する運輸局から「許可」を受ける必要があります。
この許可取得までにかかる期間は、準備を始めてから営業開始(緑ナンバーでの運行開始)まで、最短でも約5ヶ月~7ヶ月程度を見込んでおく必要があります。審査期間だけでも標準で3~5ヶ月を要するため、「明日から始めたい」と思ってもすぐに開始できるものではありません。
計画的な準備が成功の鍵となります。まずは全体の流れを正しく把握しましょう。
制度概要:一般貨物自動車運送事業許可とは
運送業の許可制度は、**「貨物自動車運送事業法」**という法律に基づいています。
この法律の目的は、運送事業の健全な発達を促進し、輸送の安全を確保することにあります。そのため、誰でも自由に始められるわけではなく、国が定める厳しい基準(要件)をクリアした事業者のみが「許可」を得て事業を行うことができます。
許可の種類
一般的に「運送業」と言われるものの多くは、**「一般貨物自動車運送事業」**を指します。他人の需要に応じ、有償で自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く)を使用して貨物を運送する事業です。
この許可を得ることで、いわゆる「緑ナンバー」を付けて営業することが可能になります。
運送業許可取得までの5つのステップ
許可取得から営業開始までのプロセスを、5つの大きなステップに分けて解説します。
ステップ1:要件の確認と事前準備
まずは、許可を受けるための「5つの要件」を満たせるか確認します。
- 営業所・休憩施設: 土地・建物の使用権原があり、都市計画法等に抵触しないこと。
- 車庫: 原則として営業所に併設(離れる場合は一定距離以内)。車両が収まる十分な広さがあること。
- 車両: 最低5台以上を確保すること(牽引車と被牽引車はセットで1台とカウント)。
- 人員: 運転手5名以上、運行管理者、整備管理者の確保。
- 資金: 事業開始に必要な資金(人件費、燃料費、賃料などの数ヶ月分)が全額自己資金で確保されていること。
この準備段階で、物件の契約や車両の選定、資金の証明(残高証明書の発行)を行います。
ステップ2:許可申請書の作成・提出
要件が整ったら、申請書類を作成し、営業所の所在地を管轄する運輸支局へ提出します。
提出する書類は非常に膨大で、事業計画書、収支予算書、役員の履歴書、施設の図面などが含まれます。書類に不備があると受理されない、あるいは審査が大幅に遅れる原因となります。
ステップ3:法令試験と審査
申請書が受理されると、審査が始まります。この期間中、非常に重要なプロセスが2つあります。
- 法令試験: 申請月の翌月または翌々月に、常勤役員(1名)が「法令試験」を受験する必要があります。これに合格しない限り、審査は進みません。
- 実態審査: 運輸局による書類審査が行われます。標準処理期間(審査にかかる目安)は、3ヶ月~5ヶ月です。
ステップ4:許可証の交付と登録免許税の納付
無事に審査を通過すると「許可」が下り、運輸支局で**許可証の交付(提示)**が行われます。
この際、登録免許税として12万円を納付する必要があります。また、許可が下りた後もすぐに走れるわけではなく、次の「運行開始」に向けた手続きが必要です。
ステップ5:運輸開始届の提出と営業開始
許可取得後、以下の手続きを経てようやく営業開始となります。
- 運行管理者・整備管理者の選任届: 選任の手続きを行います。
- 運輸開始前届(事業用自動車等連絡書): これをもって、いわゆる「緑ナンバー」への登録(番号変更)が可能になります。
- 社会保険への加入・自動車保険の契約: 必要な保険の手続きを完了させます。
- 運輸開始届: 全ての準備が整い、営業を開始したことを運輸局へ報告します。
実務上の注意点
運送業許可の申請において、特に注意すべきポイントが3つあります。
1. 資金証明のタイミング
自己資金の証明は、「申請時」と「審査期間中の特定の日」の2回、残高証明書を提出する必要があります。一度証明したからといって、審査中に資金を他へ回してしまうと、要件不足で不許可となる恐れがあります。
2. 法令試験の対策
法令試験は「30問中24問正解(8割)」が合格ラインです。不合格になった場合、再試験は一度しか受けられません。2回とも不合格になると、申請を取り下げて再申請することになり、数ヶ月の時間が無駄になってしまいます。
3. 物件選びの落とし穴
「営業所」や「車庫」として借りた場所が、実は農地法や建築基準法などで運送業に使えない場所だった……というトラブルが後を絶ちません。物件を契約する前に、必ず専門家に確認することをお勧めします。
まとめ
運送業許可の取得は、単に書類を出すだけの手続きではありません。 「人・物・金」のすべてにおいて厳しい基準をクリアし、数ヶ月にわたる審査と試験を乗り越える必要があります。
開業時期から逆算し、少なくとも半年前には準備をスタートさせることが、スムーズな経営開始への近道です。
行政書士への相談案内
運送業許可は、確認すべき法令が多岐にわたり、一つでも要件を落とすと許可が下りない非常に難易度の高い手続きで、専門的な知識が必要になります。
事前の確認が不十分なまま手続きを進めると、 申請が認められないケースもあります。
当事務所では、運送業の開業を検討されている方に向けて 許可申請のサポートを行っています。
運送業の開業をご検討の方は、 お気軽にご相談ください。
詳しくは当事務所ホームページをご覧ください。
次回の記事では、許可取得の最大の壁となる「運送業許可の5つの要件」について、より詳しく深掘りして解説する予定です。そちらも併せてご確認ください。