第2章 運送業許可の基礎 8 運送業許可とは
結論|他人の荷物を運んで運賃を受け取る場合は原則として運送業許可が必要
運送業を始めたいと考えたとき、多くの方が最初に疑問に思うのが「運送業許可とは何か」という点ではないでしょうか。
結論からいうと、トラックを使用して他人の荷物を運び、その対価として運賃を受け取る場合には、原則として「一般貨物自動車運送事業許可(いわゆる運送業許可)」が必要です。
無許可で営業を行うことは法律違反となり、罰則の対象となる可能性があります。
また、運送業許可は申請すれば誰でも取得できるものではありません。営業所・車庫・車両・人員・資金など、国土交通省が定める複数の許可要件を満たす必要があります。
この記事では、
- 運送業許可とは何か
- なぜ許可が必要なのか
- 許可が必要なケース・不要なケース
- 許可取得のメリット
- 許可取得に必要な主な要件
について、運送業の開業を検討している方に向けてわかりやすく解説します。
運送業許可とは
運送業許可の正式名称
一般的に「運送業許可」と呼ばれているものの正式名称は、
一般貨物自動車運送事業許可
です。
貨物自動車運送事業法に基づき、国土交通大臣(実際の窓口は各地方運輸局)が許可を行います。
一般貨物自動車運送事業とは、
他人の需要に応じて、有償で貨物を運送する事業
をいいます。
簡単に言えば、
「荷主から依頼を受けて荷物を運び、運賃を受け取る事業」
です。
運送会社や物流会社の多くは、この許可を取得して営業しています。
なぜ許可制度があるのか
トラック運送業は社会インフラの一つです。
運送事業者には、
- 交通安全の確保
- 荷主の利益保護
- 適正な運送サービスの提供
- 労働環境の確保
などが求められます。
もし誰でも自由に運送業を始められると、
- 整備不良車両による事故
- 過積載運行
- 過労運転
- 荷物の紛失や破損
などの問題が発生する可能性があります。
そのため国は、一定の基準を満たした事業者にのみ許可を与える制度を設けています。
一般貨物自動車運送事業とは
運送業許可の対象となる事業
次のようなケースは一般貨物自動車運送事業に該当します。
ケース1 運送会社として営業する
荷主から依頼を受け、
- 建築資材
- 食品
- 雑貨
- 工業製品
などを運送する場合です。
最も一般的な運送業の形態です。
ケース2 専属便として荷物を運ぶ
特定の企業と契約し、
専属で配送業務を行う場合も運送業許可が必要になります。
荷主が1社のみであっても、
「他人の荷物を有償で運ぶ」
以上は運送業に該当します。
ケース3 スポット便を行う
単発の運送依頼を受けて運送する場合も同様です。
継続的な事業である限り許可が必要になります。
運送業許可が不要なケース
自社の荷物を運ぶ場合
自社の商品や資材を運搬するだけであれば、一般貨物自動車運送事業には該当しません。
例えば、
- 建設会社が資材を運ぶ
- 農家が農作物を運ぶ
- 小売店が自社商品を配送する
といったケースです。
これは「自家用運送」と呼ばれます。
軽貨物運送事業
軽自動車やバイクを使用する場合は、
一般貨物自動車運送事業ではなく、
貨物軽自動車運送事業
となります。
こちらは許可制ではなく届出制です。
そのため開業のハードルは比較的低くなっています。
ただし、軽貨物と一般貨物では制度が大きく異なります。
詳しくは関連記事をご覧ください。
【内部リンク】 →「軽貨物と一般貨物運送事業の違い」
運送業許可を取得するメリット
信用力が向上する
運送業許可を取得すると、
国の許可を受けた事業者として営業できます。
荷主企業からの信頼も得やすくなります。
特に大手企業との取引では、
運送業許可の有無が契約条件になることも少なくありません。
事業の拡大が可能になる
許可を取得すると、
- 長距離輸送
- 定期便
- 専属便
- 企業配送
など幅広い業務を受注できます。
事業規模の拡大を目指すのであれば、運送業許可の取得は大きなメリットになります。
荷主からの案件獲得につながる
現在では荷主企業もコンプライアンスを重視しています。
そのため無許可事業者への発注を避ける傾向があります。
許可取得は営業活動においても重要な武器となります。
運送業許可取得に必要な主な要件
運送業許可を取得するためには、主に次の5つの要件を満たす必要があります。
1 営業所の要件
事業を行うための営業所が必要です。
営業所には、
- 使用権原があること
- 都市計画法等に適合していること
などが求められます。
2 車庫の要件
事業用車両を保管する車庫が必要です。
車庫には、
- 必要な面積があること
- 接道条件を満たすこと
- 営業所との距離要件を満たすこと
などが求められます。
3 車両の要件
許可申請時には、
原則として
5台以上の事業用車両
を確保する必要があります。
※地域や事業形態によって例外があります。
4 人的要件
事業開始時には、
- 運行管理者
- 整備管理者
の選任が必要になります。
また、欠格事由に該当しないことも重要です。
5 資金要件
運送業を開始するために必要な資金を確保していることが求められます。
具体的には、
- 車両費
- 車庫費用
- 保険料
- 人件費
- 税金
などを含めた資金計画が必要になります。
運送業許可取得でよくある失敗
車庫が使えないことが判明する
許可申請では車庫要件の確認が非常に重要です。
契約後に、
- 用途地域の問題
- 接道条件の問題
- 使用権原の問題
が発覚するケースもあります。
事前確認が欠かせません。
資金要件を満たせない
車両購入費やリース契約費用だけでなく、
運転資金も含めて審査されます。
資金計画が不十分だと許可取得が難しくなります。
申請準備に想定以上の時間がかかる
営業所や車庫の調査、必要書類の収集などに時間を要します。
運送業許可は準備を含めると数か月単位のスケジュールで考える必要があります。
実務上の注意点
運送業許可は単なる申請手続きではありません。
許可取得後も、
- 運行管理
- 点呼
- 車両管理
- 運転者教育
- 巡回指導対応
など、多くの法令遵守が求められます。
そのため、
「許可を取れば終わり」
ではなく、
「許可取得がスタート」
という意識が重要です。
まとめ
運送業許可とは、他人の荷物を有償で運送するために必要な一般貨物自動車運送事業許可のことです。
運送業を適法に営業するためには、
- 営業所
- 車庫
- 車両
- 人員
- 資金
といった許可要件を満たさなければなりません。
運送業の開業を成功させるためには、早い段階から許可要件を理解し、計画的に準備を進めることが重要です。
運送業許可のご相談は行政書士山下法政事務所へ
運送業許可は、営業所や車庫の調査、資金要件の確認、申請書類の作成など専門的な知識が必要となる手続きです。
準備不足のまま進めてしまうと、許可取得までの期間が長引いたり、計画の見直しが必要になったりすることもあります。
行政書士山下法政事務所では、
- 運送業許可申請
- 営業所・車庫の事前確認
- 資金計画の確認
- 許可取得後の各種手続き
についてサポートしています。
30年間行政実務に携わった経験を活かし、事業者の皆さまに寄り添った支援を行っています。
ご相談は、行政書士山下法政事務所 よりお気軽にお問い合わせください。