第2章 運送業許可の基礎 10 運送業許可取得までの流れ
結論
運送業(一般貨物自動車運送事業)を始めるためには、単に申請書を提出するだけではなく、営業所・車庫・車両・人員・資金などの許可要件を満たしたうえで、運輸局へ許可申請を行う必要があります。
また、許可取得後もすぐに営業できるわけではありません。法令試験の受験、許可取得、運行管理体制の整備、事業用ナンバーの取得、運輸開始届の提出など複数の手続きを経て、初めて営業を開始できます。
そのため、「申請したらすぐ運送業を始められる」と考えていると、想定以上に時間がかかるケースがあります。
この記事では、運送業許可取得までの流れを順番にわかりやすく解説します。
運送業許可とは
運送業許可とは、正式には「一般貨物自動車運送事業許可」をいいます。
他人から運賃を受け取って荷物を運ぶ事業を行う場合には、貨物自動車運送事業法に基づく許可が必要です。
例えば、
- 荷主から依頼を受けて貨物を運ぶ
- 配送業務を請け負う
- トラックで商品を輸送する
といった事業を行う場合には、原則として許可が必要になります。
一方で、自社の商品を自社のトラックで運ぶだけの場合は運送業には該当しません。
運送業許可の基本については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
→関連記事:「運送業許可とは?」
運送業許可取得までの全体の流れ
運送業許可取得までの流れを簡単にまとめると、以下のようになります。
①事前準備
↓
②許可要件の確認
↓
③許可申請
↓
④法令試験受験
↓
⑤運送業許可取得
↓
⑥許可後の手続き
↓
⑦事業用ナンバー取得
↓
⑧運輸開始届提出
↓
⑨営業開始
運送業許可取得までの期間は一般的に4~6か月程度かかります。
①事前準備
まずは運送業を始めるための事業計画を検討します。
主な確認事項は以下のとおりです。
営業所の確保
営業所として使用できる物件を確保します。
車庫の確保
事業用車両を保管する車庫が必要です。
車両の準備
一般貨物自動車運送事業では、原則として営業用車両を5台以上確保する必要があります。
人員体制の検討
- 運行管理者
- 整備管理者
- ドライバー
などの体制を整備します。
資金計画の作成
許可取得には一定額以上の自己資金が必要になります。
②許可要件の確認
運送業許可を取得するためには、主に次の要件を満たす必要があります。
営業所要件
営業活動を行う拠点が必要です。
車庫要件
車両を保管するための車庫が必要です。
車両要件
原則5台以上の事業用車両を確保します。
人的要件
運行管理者や整備管理者を選任できる体制が必要です。
資金要件
運転資金を含めた十分な自己資金が必要です。
詳しくは以下の記事で解説しています。
→関連記事:「運送業許可の5つの要件」
③許可申請
要件を満たしたら、管轄運輸支局を経由して地方運輸局へ申請を行います。
主な提出書類は、
- 許可申請書
- 事業計画書
- 残高証明書
- 営業所関係書類
- 車庫関係書類
- 役員関係書類
などです。
提出書類は非常に多く、事前確認不足により補正指示を受けることも少なくありません。
④法令試験を受験する
申請後、役員等のうち常勤で事業運営を行う方が法令試験を受験します。
法令試験とは
貨物自動車運送事業法などについて出題される試験です。
主な出題範囲は、
- 貨物自動車運送事業法
- 道路運送車両法
- 道路交通法
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
などです。
合格が必要
法令試験に合格しなければ許可は受けられません。
そのため、申請準備と並行して試験対策を進めることが重要です。
⑤運送業許可取得
法令試験に合格し、申請内容に問題がなければ運送業許可が下ります。
許可証が交付されることで正式に事業者として認められます。
ただし、この段階ではまだ営業を開始できません。
ここが運送業許可申請でよく誤解されるポイントです。
⑥許可後の手続きを行う
許可取得後は運輸開始前確認を受けるための準備を進めます。
主な内容は、
- 運行管理体制の整備
- 就業規則等の整備
- 運転者の確保
- 社会保険加入
- 車両契約の完了
などです。
許可後に必要な手続きは多くあります。
詳しくは関連記事で解説しています。
→関連記事:「運送業許可後の手続き」
⑦事業用ナンバー(緑ナンバー)を取得する
運輸開始前確認後、事業用自動車等連絡書の交付を受けます。
その後、運輸支局で事業用登録を行い、緑ナンバーを取得します。
緑ナンバーとは
営業用車両であることを示すナンバープレートです。
一般貨物自動車運送事業では、緑ナンバーの取得が必須となります。
⑧運輸開始届を提出する
営業開始後は、所定期間内に運輸開始届を提出します。
運輸開始届を提出することで、正式に事業開始の報告を行います。
⑨営業開始
ここまでの手続きが完了すると、正式に運送業を開始できます。
荷主との契約締結や配送業務を行い、運送事業者として営業活動を開始します。
運送業許可取得までの期間はどれくらい?
多くの方が気になるのが許可取得までの期間です。
一般的な目安は以下のとおりです。
| 手続き | 期間 |
| 事前準備 | 1~2か月 |
| 申請~許可 | 約3~5か月 |
| 許可後手続き | 約1か月 |
合計すると、
おおむね4~6か月程度
かかるケースが一般的です。
営業所や車庫が決まっていない場合や、法令試験の準備が不足している場合には、さらに長期間になることもあります。
実務上の注意点
車庫選びを先に進めない
運送業許可では車庫要件が非常に重要です。
契約後に要件を満たしていないことが判明すると、契約変更や再契約が必要になる場合があります。
車両購入を急がない
許可取得前に高額な車両を購入すると、事業計画変更が生じた場合に大きな負担になります。
購入時期は慎重に検討しましょう。
資金要件を軽視しない
運送業許可では残高証明による資金確認が行われます。
開業資金だけでなく、許可要件を満たすための資金計画が重要です。
法令試験対策を早めに行う
法令試験で不合格になると許可取得までの期間が延びる可能性があります。
申請前から学習を始めておくことをおすすめします。
まとめ
運送業許可取得までの流れは、
- 事前準備
- 許可要件確認
- 許可申請
- 法令試験
- 許可取得
- 許可後手続き
- 緑ナンバー取得
- 運輸開始届提出
- 営業開始
という順番で進みます。
運送業許可は単なる書類申請ではなく、営業所・車庫・車両・人員・資金など多くの要件を満たす必要があります。
また、許可後にも複数の手続きがあるため、全体の流れを理解したうえで計画的に準備を進めることが大切です。
運送業許可のご相談は行政書士山下法政事務所へ
運送業許可申請は、営業所や車庫の要件確認、資金要件の確認、申請書類の作成など専門的な知識が必要な手続きです。
事前確認が不十分なまま進めてしまうと、申請のやり直しや許可取得の遅れにつながる場合があります。
行政書士山下法政事務所では、運送業許可申請をはじめ、許可後の各種手続きや運送事業者向けのサポートを行っています。
元行政職員としての経験を活かし、事業者様の状況に合わせたサポートを心掛けています。
運送業の開業をご検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。事務所ホームページ: 行政書士山下法政事務所