第7章 巡回指導・監査 45 巡回指導とは
結論|巡回指導は「安全管理体制」を確認する重要な制度です
一般貨物自動車運送事業を開始すると、運送会社は許可取得後も継続して法令を守りながら事業を運営しなければなりません。
その際に実施されるのが「巡回指導」です。
巡回指導とは、適正化実施機関(トラック協会の適正化事業実施機関など)が運送会社を訪問し、法令遵守状況や安全管理体制を確認・指導する制度です。
「監査」と聞くと厳しいイメージを持つ方も多いですが、巡回指導は違反摘発だけを目的とした制度ではありません。
むしろ、
- 法令違反を未然に防ぐ
- 安全運行体制を整える
- 重大事故を防止する
- 将来的な監査リスクを下げる
という意味合いが強い制度です。
しかし、巡回指導で多くの指摘を受けたり、重大な法令違反が見つかった場合には、運輸局の監査につながるケースもあります。
そのため、運送業を経営するうえでは「巡回指導は必ず来るもの」と考え、日頃から適切な管理体制を整えておくことが重要です。
この記事では、
- 巡回指導とは何か
- 誰が実施するのか
- どのような流れで行われるのか
- どんな項目を確認されるのか
- 監査との違い
- 実務上の注意点
を初心者にもわかりやすく解説します。
巡回指導とは
巡回指導の目的
巡回指導とは、運送事業者に対して適正な事業運営を促すために実施される指導制度です。
貨物自動車運送事業では、多くのトラックが全国を走行しています。
もし法令違反や安全管理不足が放置されれば、
- 重大事故
- 過労運転
- 飲酒運転
- 無資格運行
- 車両整備不良
などにつながる危険があります。
そのため国土交通省では、貨物自動車運送事業法に基づき、安全確保のための管理体制整備を重視しています。
巡回指導は、その一環として実施される制度です。
単なる形式的な確認ではなく、
「適切に安全管理ができているか」
を確認する重要な制度となっています。
巡回指導を行う機関
巡回指導は、主に各都道府県のトラック協会に設置されている「適正化事業実施機関」が実施します。
一般的には、
- 全国貨物自動車運送適正化事業実施機関
- 地方貨物自動車運送適正化事業実施機関
などが関与しています。
実際には、各都道府県トラック協会の担当者が事業所を訪問するケースが多くなります。
なお、巡回指導は運輸局の「監査」とは異なります。
しかし、重大な法令違反が確認された場合には、運輸局へ情報提供され、監査につながることがあります。
そのため、
「巡回指導だから軽く考えてよい」
というものではありません。
巡回指導の流れ
①事前通知
通常、巡回指導の前には事前連絡があります。
- 日時
- 必要書類
- 準備事項
などが通知されます。
事前通知があるため、必要書類を整理しておくことが重要です。
ただし、過去に重大違反がある場合などは、通常とは異なる対応となるケースもあります。
②事業所訪問
巡回指導当日は、担当者が営業所を訪問します。
その際、
- 営業所
- 点呼場所
- 車庫
- 管理体制
などを確認されます。
特に重要視されるのは、
「帳票類が適切に管理されているか」
という点です。
運送業では、多数の法定帳簿の作成・保存義務があります。
書類不備は非常に多い指摘事項です。
③帳簿・記録確認
巡回指導では、さまざまな記録類を確認されます。
代表例としては以下があります。
点呼記録
点呼実施状況は非常に重要です。
- 実施漏れ
- 記録漏れ
- アルコールチェック未記録
などは頻繁に指摘されます。
点呼については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事: 「点呼とは」 「点呼方法」
運転者台帳
運転者ごとの情報管理も確認対象です。
- 適性診断
- 健康診断
- 免許証確認
などの管理状況が確認されます。
車両管理関係
車両についても、
- 車検
- 点検整備
- 整備記録
などが確認されます。
整備不良は重大事故につながるため、重要な確認項目です。
労務管理関係
運転時間や拘束時間なども確認対象となる場合があります。
過労運転防止は非常に重要です。
特に2024年問題以降、労務管理への関心は高まっています。
巡回指導と監査の違い
巡回指導は「改善指導」が中心
巡回指導は、事業者に適正運営を促す目的があります。
そのため、
- 改善指導
- 助言
- 法令説明
という側面が強くなります。
不足があれば改善を求められます。
監査は「法令違反確認」が中心
一方、監査は運輸局が実施する行政調査です。
監査では、
- 法令違反
- 重大事故
- 悪質違反
などが厳しく確認されます。
違反内容によっては、
- 行政処分
- 車両停止
- 事業停止
- 許可取消
などにつながる場合があります。
つまり、
巡回指導は「予防」 監査は「是正・処分」
という違いがあります。
巡回指導でよく指摘されるポイント
点呼記録の不備
最も多い指摘の一つです。
- 酒気帯び確認漏れ
- 実施時刻未記載
- 指示事項未記載
などは頻繁にあります。
形式だけでなく、実際に適切な点呼が行われていることが重要です。
運転者教育不足
運転者教育も重要です。
年間教育計画や実施記録が不足しているケースがあります。
教育実施後は記録保存も必要です。
適性診断未受診
初任運転者などに必要な適性診断が未実施となっているケースもあります。
運転者採用時は特に注意が必要です。
帳簿保存不足
記録は「作成するだけ」で終わりではありません。
法定保存期間中は適切に保存する必要があります。
紛失や未保存は指摘対象になります。
巡回指導対策として重要なこと
日常的な管理が最重要
巡回指導対策で最も重要なのは、
「普段から適切に管理すること」
です。
巡回指導直前だけ書類を整えても、実態が伴っていなければ意味がありません。
日頃から、
- 点呼
- 教育
- 車両管理
- 労務管理
- 帳簿管理
を継続的に実施する必要があります。
書類管理ルールを統一する
運送会社では管理書類が非常に多くなります。
そのため、
- 保存場所
- 管理担当者
- 保存期間
を明確化しておくことが重要です。
書類が整理されている会社は、巡回指導でもスムーズに対応できる傾向があります。
不明点は専門家へ相談する
運送業は法令が多く、制度も複雑です。
特に開業直後の事業者は、
- 何を保存すべきか
- どの教育が必要か
- 点呼記録をどう作成するか
で悩むことが少なくありません。
誤った理解のまま運営すると、巡回指導や監査で大きな問題になる可能性があります。
そのため、不明点は早めに行政書士などの専門家へ相談することも重要です。
まとめ|巡回指導は「安全運行体制確認」の重要制度
巡回指導は、運送会社の安全管理体制や法令遵守状況を確認する重要な制度です。
巡回指導そのものは改善指導が中心ですが、重大な違反がある場合には監査につながる可能性があります。
そのため、
- 点呼
- 運転者教育
- 車両管理
- 帳簿保存
などを日頃から適切に実施することが重要です。
特に運送業は、許可取得後の管理体制が非常に重要な業界です。
「許可を取ったら終わり」ではなく、継続的な法令遵守が求められます。
運送業の巡回指導対策は行政書士へご相談ください
巡回指導では、多数の帳簿・記録・管理体制が確認されます。
開業直後の事業者の場合、
- 何を準備すればよいかわからない
- 点呼記録の作成方法が不安
- 巡回指導対策をしたい
- 将来的な監査リスクを減らしたい
というケースも少なくありません。
運送業許可は、取得後の運営実務も非常に重要です。
当事務所では、
- 運送業許可申請
- 巡回指導対策
- 各種変更手続き
- 帳簿管理の相談
などのサポートを行っています。
詳しくは、行政書士山下法政事務所 をご覧ください。
また、運送業に関する他の記事は、行政書士山下法政事務所ブログ でも解説しています。